私と彼と――恋愛小説。

「構いませんよ、もちろん。多分編集の方でカットされるでしょうけどね」


軽口を叩きながら、恭子が目の前に座る。何時もなら私は恭子の隣で話を聞いている。


基本はライターに取材を進めて貰うけれど、どうしても聞きたい事や聞き忘れをフォローする役割もある。


代わりに少し離れて、佐久間が私を見ている。私の仕事観?恋愛観?あらためて問われるとは思わなかった。


「ライターの神戸恭子です。今回、カヲルさんには春に創刊される新雑誌noxに掲載されるインタビュー記事と云う事でお話をお伺い出来ればと思っています」


「そこからなの?」


つい笑いそうになる私に、恭子はキツイ視線を投げる。


「当然よ。私は仕事で手抜きはしないの、きちんと聞き出すから覚悟してよね」


「ごめん…了解した…」


佐久間だけが笑いを堪えている。


「あの、恭子…じゃなくて神戸さん…若干気に掛かる方がみえて話がし難いのですけど」


「そうですか、それじゃあインタビューの光景だけ最初に撮ってハケて貰います」


恭子が佐久間を向いてそう告げた。佐久間はまた笑い頷いた。