私と彼と――恋愛小説。

佐久間の指示でポーズをとる。表情は写らないのだからそれ程戸惑う事はない。


「そのまま正面向いてよ」


声に釣られて振り返るとシャッターを切っていたのは佐久間だった。


「どう。いい感じじゃない?」


近づいてきた佐久間がカメラの小さなモニタを見せる。


「ダメですよ…顔が写ってますから」


「そうだね。残念だなぁ…」


「消しておいて下さいよ。間違って編集にまわったら困りますから」


わかったと言いながら佐久間はPCへデータを落とした。


「恭子さん、それじゃインタビュー中のカット撮ります。恭子さんは顔写っていいですよね?」


いつの間にかメイクを施された恭子は愉しそうだった。