私と彼と――恋愛小説。

前回とは違うスタジオの部屋だった。何処から持ち込んだのか、簡単なカフェ風のセットが組まれている。


さらりとこんな事をしてしまう佐久間達…


ジュンさんの手でメイクが施される間、恭子と佐久間は小声で打ち合わせを続けていた。


「そんな難しい顔しないの!小皺が増えるわよ」


笑いながらもジュンさんの手は止まらない。他人に本格的なメイクをされるのは心地好い。


これが別の目的ならば、もっと愉快なんだろうと鏡を見つめて考えていた。


「正面からは撮らないからさ、加奈ちゃんだとはわからない様にするからね」


「変わるもんだねぇ…加奈子さ、ついでにお見合い写真も撮って貰えば?」


「恭子…うるさい…」


「機嫌悪いんだから。何時もの五割ましで綺麗なのに」


他人事だと思ってお気楽な事を口にする。