私と彼と――恋愛小説。

佐久間の事務所は何度か訪れたスタジオから程近い場所に在った。指定の時間に恭子を拾い事務所へゆく。


細長い小さなビルの三階。エレベーターの扉が開くと大きなガラスの扉があった。


小さくOffice Sakumaと文字のシールがガラスに貼ってある。小さなビルとは云えワンフロア全てが彼の事務所らしい。


扉の向こうには濃い色の木製パーテーションが天井迄立っていて、中は覗けない。


呼出しのインターフォンも無い事に戸惑ってしまう。その様子を見て恭子が呟く。


「加奈子も初めてなの?此処」


「えっと、前の打ち合せはスタジオと自宅だったから…携帯に電話してみる」


「へぇー事務所より自宅に先に行ったんだ」


ニヤリと笑ってそんな風に言う。この間、余計な事を話すのじゃ無かったと後悔した。


「変な言い方しないでよね…」