私と彼と――恋愛小説。

「そうそう。編集のくせに反応鈍いねぇ。僕がその〈カヲル〉ちゃんです」


何て軽い奴なんだろう…違う…絶対に違う!


「ふざけないでください!誰に聞いたんですか!私達は真剣にやってるんですよ!」


「だーかーら…その〈カヲル〉だってば。本当に頭固いなぁ。仕方ないな、ちょっと待ってねぇ…」


男は私の目の前で携帯を弄り出す。指先はもの凄い勢いで文字を入力している。


ものの数分だろうか〈カヲル〉が私の目の前に画面を差し出した。


それは間違いなく、あの小説の続きに思えた。


「さて、大サービス。イレギュラーの更新でしかも一ページだって。連載してから初めてだなぁ」


その瞬間、私のスマホがメールの通知を知らせる。彼は笑いながら顎で画面を見る様に指図した。


ある筈のない更新通知…〈カヲル〉が作品を更新した証拠だった。


「し…失礼しました」