ブンベツ【完】




「ハナちゃんこれあげるー」

「……ツララくんこれはゴミだよ?」


教師になって二年、未だに苗字で「先生」すら付けてくれない呼ばれ方は定着してもう慣れた。
そして、彼からプレゼントという名の「ゴミ」を貰うのももう慣れた。


「俺がプレゼントって言ってんだからそれはゴミじゃないよ?」

「ガムの捨て紙を貰って嬉しがる人を私は未だに見たことないです」

「じゃあハナちゃん喜んで?捨て紙もらって初めて喜んだ人になれるよ?」

「そんな肩書きいりません。それより手止まってる」


放課後の教室、ストーブの前で机を挟み補習授業の最中。
先週中間テストが終えてあまり良いとは言えない点数を取ったツララくんの為に、熱心に取りかかってるんだけどどうもスムーズに勉強してくれない。


「数学なんてでぇっきれぇだ!こんなの鼻くそ以下だ!」


そう言ってもう試合放棄なのかシャーペンを筆箱に仕舞う始末。
教師も楽な仕事じゃない。

したくもない勉強をさせる為に生徒にエンジンをかけさせなきゃいけない。
私は勉強は嫌いな方じゃなかったからここまで嘆くほどじゃなかったけど、ツララくんの場合だと一筋縄じゃいかない。


「ハナちゃんクリーム玄米ブランって知ってる?なんか今無性に食いたいんだよね。スンがこの前食ってて一口もらったんだけど意外にうまくてさ。あ、スンって隣のクラスの奴ね。スンは”めっちゃコクるわぁコクるわぁ”って言いながら食ってたんだけど食べるのやめねぇからアイツなんだかんだ言って好きなんだよな、って話」