叫んではないけど悲鳴に近いフユちゃんの声に吃驚して体が止まった。
聞いた事のないその声にどうしたものかと振り返ると、そこにはバツの悪そうな表情のフユちゃんが私を見ていて。
「どうしたの?」
そう問いかける私にフユちゃんは手を額に当てて一呼吸おくと、消えてしまいそうな小さな声で。
「……なんか今更だと思ってるしハナの悲しむ顔を見たくないけど、どう処理するのはハナが決める事だと思うから…」
「フユちゃん…?」
「……ハナずっと寝言で、……”カイさん”って言いながら泣いてた…」
私を現実が刺し殺す。
『ハナ』って優しく読んで目尻がクシャってなるカイさんの顔が脳裏に浮かんだ。
浮かんで、黒い靄がかかって、カイさんを消していく。
でもねフユちゃん、
「もう4年も経ってる…。そんな時間が私にとっては凄く重いの…」
自分でも酷い顔だろうって自覚しながら笑って部屋を出た。
身が凍える様な寒さが不快で巻いてるマフラーに顔を埋めて帰路をたどった。
カイさんに会うのをやめて、受験勉強に打ち込んで行きたかった短大にも受かって教員免許も取れた。
思い描い得ていた人生を送れてるのに、足りないものが一つだけある。
それを埋めることなく生きてきたら気づけば4年も経った。
4年しか経ってない。

