結婚してるらしい”アヤセ”さんと不倫してるくらい彼女が好きなのかもしれない。
『なら、私たちの関係は?』
連想的に浮かぶその疑問をぶつけたら、終わってしまう。
もうここには来れない。カイさんに会えない。
そんなツライ事になるくらいなら、ふわふわと曖昧なこの関係のままの方が私はずっといい。
「や、放して…」
「ハナ」
早く距離を取りたくて力一杯カイさんの胸を押すけど、いとも簡単に腕を掴まれる。
体を捻って暴れる私をカイさんは抑圧しようとしてくる。
「やだやだカイさん、」
「何が嫌なんだよ?」
「放してお願いッ」
「ハナ」
「カイさんやだッ」
「俺はあんたを傷つけたりしねぇよ」
「聞きたくないぃ」
「どうせアスカに吹き込まれてんだろ?」
「やだやだッ」
「ーーー俺はあんたが望む答えを持ってる」
「…ッ」
私が望む、答え…?
困惑する私の手をギュッと握って、至近距離の中反らせない鋭い視線が突き刺さった。
あぁ、この人はこんな綺麗な瞳をしてるんだと思った。
「勝手にアスカに吹き込まれて泣かせれてんな」
私が望むのは、カイさんとずっと一緒にいること…。
この人に幸せにされて、私が幸せにすること…。
さっきまでバカみたいに溢れてた涙は消えていた。
今あるのは、一変した状況が与えた少しの期待と不安。

