「死ね俺じゃねーよ」


少し切れ気味なヨシノさんを完全無視を決め込んで、もう察しがついたのかカイさんはそれ以上は何も言わなかった。
店内は静かで聞こえるのはエアコンの音と私の鼻を啜る音。
カイさんが側にいる安心感が生まれて堰を切ったように涙は止まらない。

そんな私の腰を誰かがそっと引いて泣きじゃくる私をその場から離れさせる。
顔を見なくてもカイさんだって分かってる。

この優しい手との温もりと鼻に伝うカイさんの匂い。
私の落ち着く場所。


「震えてんじゃねぇか…首に腕回せ」


言われるがままに大人しく腕を回して距離が近づく。
離れたくなくてギュッと力を込めると私の体は中に浮き、カイさんに抱き上げられた。
色んな意味で恥ずかしくて顔を見られないようにカイさんの首に顔を埋めて耐えた。

てっきりいつもの居間に連れてかれると思ったのに、カイさんに運ばれたのは何故か寝室で。
敷きっぱなしの布団の上に下された。

エアコンをつけて布団の上に座って微動だにしない私の前に足を広げて座る。
長い足が私を囲んでカイさんの胸が目の前にある。


「アスカに何言われた?」

「……」


そんなこと言えるわけない…。


「アスカに何された?」

「……」


ブオーンと響くエアコンに沈黙を通す部屋は静かで、顔を上げず膝の上で拳を作る私をカイさんが見てるのを感じる。