まさかこの格好で電車に乗って帰らなきゃいけないのかと焦りを浮かべる私の手を引いてカイさんが連れてった場所は、お店から少し歩いた所にある駐車場。
手慣れたようにロックされてたキーを解除すると黒塗りの車に乗せられた。
少し煙草臭い車内はカイさんの吸ってる煙草と一緒のもので、本当にヘビースモーカーなんだと思わず苦笑いした。
「車持ってたなんて思いませんでした」
「ヨシノだ」
「そうなんですか。なんかカイさんって全然外にでるイメージないから運転してるなんて新鮮です」
まさか一年中屋根の下でずっと煙草を吹かして生きてるなんて思わないけど、私の中ではそのくらいインドアっていうイメージがあるから少し笑ってしまう。
カイさんの運転姿見て私、浮かれちゃってる…。
一晩過ごしてそのまま車で送ってもらうなんてニヤニヤが止まらないよ。
「それ、やめろよ」
「え?」
ニヤニヤしてるとこ見られた?!
「敬語」
「え、あ…け、敬語ですか?」
「普通に話せよ。あんただって喋りづらいだろ」
「あ…いや、なんかもう慣れちゃったんです…それに今更タメ語なんて私がオロオロしちゃいます」
恐れ多すぎて使えないってことも理由の一つだけど、年上の人にタメ語をやすやすと遣えるほど私の心臓は強くできていない。

