あぁ…そうだ……、ブラは台所だ…。
おまけに浴衣もそこに散乱してるであろう。
誰もいないことを確認してまるで忍びのようにそれらを一気に掻っ攫って急いで身に付ける。
帯は結べないから仕方なしに応急処置として仮紐だけ結んだ。
脱衣所を出るとちょうど一階に降りてきたカイさんは入れ違いでお風呂に入っていった。
一息ついてカイさんがシャワーしている間、携帯を見たら案の定と言うべきか。
両親からの着信の山だった。
ここまで来ると折り返しするのさえ怖い。
怒られることを覚悟して掛け直すとワンコール目で出た母に罪悪感が募った。
いったい何してたの、とか。
今どこにいるの、とか。
決して怒声を上げることなんてなくて、ただ安堵の声を漏らす母に申し訳なさすぎて「ごめんなさい」としか言えなかった。
「ごめんなさい…すぐ帰るから…」
そう言って電話を切った頃には正座の状態になってた。
人生初の無断外泊。
帰って理由を聞かれたら昨日の情事なんて言えるはずないから他に何か考えなくちゃならない。
…嘘付きたくないけど背に腹は変えられない。
さっきまで幸せだったのに一気に現実に戻って寂しさを感じる。
思わず溜息を零しているとシャワーを終えたカイさんが半裸で髪をわしゃわしゃ拭きながら出てきた。

