「あ、マジで浴衣で来たんだ?」
お祭り当日。
ごった返す駅に待ち合わせの中、私を見て言ったのがその言葉だった。
…元を正せば貴方が言ったんじゃないって思ったけど、顔には出さず曖昧な返事をした。
まぁだけどカイさんに見せたくて着てきたのが主な理由なんだけど…。
「可愛い」
え?
「って言ったほうがいい?」
とニヤリと意地悪な顔をして笑うアスカさんに呆れ顔しか出てこない。
なんだこの人もまともなことが言えるんだって一瞬だけでも思った私がバカだった。
こういう人って死ぬまでこういう人のままって言うし、振り回される人の気持ちを考えたことがあるんだろうか。
「怒った?」
「いえ。呆れただけです」
「嘘つくなよ明らかムッとした顔したぞ!」
「呆れ顔をしたんです」
駄目だ。
なんか待ち合わせして数分なのに凄く疲労感に苛まれてる。
この人といてカイさんと会う頃には体力が削りに削られてそうで怖い。
出来ることなら帰ってしまいたい。
早く…カイさんに会いたい…。

