帰って早速押入れから浴衣を引っ張り出した。
浴衣なんていつぶりだろう。
お祭りに行くことがあってもわざわざ浴衣を着て行くなんて最近じゃ皆無だった。
大きな椿の花が特徴の薄いブルーをモチーフの浴衣。
身長は伸びてないから丈の直しは必要ない。
…すごく、ドキドキする。
着た姿を見てカイさんがどう思うのか。
可愛いなって思ってもらいたい。
カイさんに喜んでほしい。
私の頭はお祭りに行くことよりもカイさんに見せに行くことばかり考えてる。
部屋の姿見の前で浴衣を羽織る私の首筋に赤い痕が体温を上昇させ、カイさんのことが頭から離れない。
「……独占欲の、表れ…」
フユちゃんの言葉が私の体温を駆り立てる。
もし仮に百万歩譲ったとして、カイさんが私に独占欲の表れでこれを付けたならって考えるだけで、自惚れそうになる。
カイさんのものでありたいって、どんどん貪欲になってしまいそうで怖い。
きっと…キスを求められて舞い上がってる。
ただの単純な欲求かもしれない。
気まぐれかもしれない。
深い意味なんてない。

