ブンベツ【完】



腰に腕を回されて後頭部を抑えられて、まるで離さないと言ってるようにギュッと密着する。

そんな風にされたら帰りたくなくなる…。


「浴衣、着んのか」

「え?」

「アスカと行くんだろ?花火大会」

「え、あ、いや…」


もうそれは私以外は決定事項なんだろうか。
みんな私が行くと思ってるんだろうか。

そんな聞き方をしてくる様子だとカイさんは行かないっぽいし。
どう返事していいか分からなくて吃る私に、


「終わったら見せに来い」

「え?」

「浴衣姿見せに来いよ」

「…はい」


そんなこと言われたら断れないじゃない…。
ましてやこんな至近距離で耳元で囁かれて断れる筈がない。

私に素直に返事をさせてしまうカイさんはズルいと思う。
わざわざ耳元で囁くなんて絶対わざとやってるんだ。


「ハナ?」

「ッみ、耳元で囁かないで下さいッ」

「気ぃ張っとけ」

「気?」

「アスカだ。簡単に触られたりすんなよ」

「……あるわけないですそんなこと」