アイスを食べ終わる頃にはもう目の前はお店だった。
夢はあっという間。
来るときはあんなに長かったのに帰りは一瞬だった。
携帯の液晶画面を見ると時刻は20時手前。
長居するのも悪いからそろそろ帰らないといけない。
…もっとカイさんと二人でいたかったけどしょうがない。
「あの、そろそろ帰ります…」
お店の裏口から入ろうとするカイさんに声をかけた。
このまま中に入らないで帰った方がいい気がした。
幸いなことに荷物は携帯しかないし。
サジさんに挨拶できないのは心苦しいけど、アスカさんに会ったらまたロクなことがなさそうだから。
「それじゃあまた明日…です…」
変な日本語になってしまったことが恥ずかしくて、一礼をしてそそくさ帰ろうと踵を返した時。
「ハナ」
名前を呼ばれ右腕を掴まれてそのまま引き寄せられた。
ドサッとカイさんが持ってたコンビニ袋が地面に落ちるのが聞こたと同時だった。
引力に身を任せ、腰に腕を回されて気づいた時には唇が触れていた。
いや違う。
顔が近づいて来るときにはもうどうなるか分かっていた。
分かってて目を閉じた。
別れのキスがこんなに愛しく感じるなんて思わなかった。
優しく触れるキスに酔いしれる。

