不意にかかる聞き覚えのあるその声に反射的に振り返るとそこには、
「そんな格好で一人でチョロチョロすんな」
一番顔を見せたくないカイさんの姿。
…どうして、追いかけてきたりなんか…。
いったい、いつから後ろに…?
あまりにも不意打ちすぎてどう反応していいのか分からず、目の前にいるカイさんをジッと見るしかなかった。
相手の出方を見るような、緊迫した空気が張り詰めて息をするのも忘れそうな。
草履を引っ掛けて気怠さを隠さないカイさんにどう声をかけていいか分からない。
頭が真っ白で、喉もカラカラで、心臓が大きく脈を打つのを感じながら黙り込む私より先に仕掛けてきたのはカイさんだった。
「アイスぐらい奢ってやる」
「え?」
「コンビニ」
そう言うとカイさんはコンビニに向かって歩き始めた。
その言葉を理解するのに数秒かけ、段々と距離が離れていくカイさんの背中を見てハッとして直ぐさま追いかけた。
数歩後ろを歩く私に、カイさんは手ぶらだったことも突然飛び出したことも触れることはなかった。

