ブンベツ【完】



これは席順が悪い。
卓袱台を囲むように私の左右にはアスカさんとサジさんで、目の前に何も言わないカイさん。

本当はカイさんの隣が良かった。
酌をしろって言ったのはアスカさんなのに話と全然違うじゃない。

カイさんの隣に行きたい。
こんなタンクトップ着た変な人よりカイさんが良いのに。

「こっち来い」とか言ってくれたら迷わず行くのに。
ずっとそこから離れないのに。
「顔真っ赤」とかいつもみたいに意地悪言って笑って欲しいのに。


「アスカお前今日うるさい。いつもうるさいけど今日は一段とうるさい頭に響くんだよ」

「サジくん俺に厳しいっすよ」


煙草とお酒に構って私はそっちのけ。
気分屋のカイさんの気を引くのはいつだって大変。
キスも、いつもカイさんの気分で私に主導権なんて握らせない。

……なんで、私こんなことしか言えないんだろう。
今日はついてない日だ。


「明後日暇?ていうか暇だよな?友達いねーもんな」


この人に会った瞬間からロクなことがない。


「……暇じゃないです」

「嘘だな。今間があった」

「ないですよ!」