やばい、スイッチが入った。
母のスイッチが入ると後々面倒くさくなることを察して電話を切ろうとすると、
『そういえば、あの件はどうなったの?ーーーーー麻生さんとこの息子さんとは』
今一番聞かれたくなかった事を、易々と口にした母に頭痛がした。
怖くてカイさんの方を見れない…。
声が大きい母のことだから絶対会話が漏れてる。
やましい事なんて何一つないけど、あの電話があった朝、カイさんは麻生先輩を知ってるから。
あの後ちゃんとカイさんに説明したし、麻生先輩にもちゃんともっかいお断りもした。
今一番触れて欲しくない話題なのに、母は関係なしに電話越しに話し続ける。
『聞いたところ麻生さんの息子さん、大企業にお勤めなさってるそうじゃないの!あのーほら、よくCMに流れるあの会社!』
「あーはいはい、わかったわかった」
『収入はいいし安定じゃないのよ。おまけに人柄もいいんだから早いとこ唾をつけとかきゃ誰かに取られちゃうんだからね?』
唾をつけるって…。
お母さん、言い方よ…。
「取り敢えず明後日行くから。じゃあね」
キリがないと思い強硬手段に出て電話を切った。
…新年早々、最悪…。

