ブンベツ【完】



視界も思考もぐちゃぐちゃでもう何が何だか分からない。
キツく縫い付けられてた手は解かれ、上体を起こされ向き合う形になった。

カイさんの足と足の間に収まる私は子供の様に泣き噦(じゃく)る。
カイさんと付き合ったときもこんな感じだった。
畳に敷かれた布団の上であの時もこんな状態で、カイさんは私の望むものをくれた。


「確かに、ヨシノと結婚してもアヤセに拘ってた。俺の意志で、それは俺にしかわからない、俺だけのものだ」

「………」

「けどアンタと出会ってそれは変わった。アンタは自分の所為だって思ってるけど、ーーーーそれも俺の意志だ。俺だけのものだ」

「ッ」

「アンタを選んだのも、アンタに執着してるのも、全部俺が決めた事だ」


伸びてきた手にそっと抱きしめられ、優しさに包まれながら「この人の全部は全部私のものなんだ」と感じた。


「そんなに不安ならヨシノもサジもアスカも切る。知り合い全部だ。アンタが望むなら別の街に行ってもいい」

「そ、そこまでカイさんがする必要なんてないですッ!」

「言っただろーーーー」




これは俺の意志で、俺にしかわからない、俺だけのものだ。