『何もお見合いってわけじゃなくてね?ただお知り合いになって気が合えばって話よ?麻生さんの息子さん、ハナのことを話したら是非って。同じ高校らしいじゃないのよ?ハナと話したことがあるって覚えてくださってて、写真を拝見したけど誠実そうな人でお母さん、いいと思う。ハナにも写真送っておくから見たら連絡頂戴ね!』
留守電に残されたいつもよりワントーン高めの母の声色はわかりやすく、かなり上機嫌のもの。
会った事もないのに写真一枚で母の信用を勝ち取った”麻生先輩”は確かに「誠実そう」という言葉がよく似合う人だと思う。
母からのラインの通知を開けば数年ぶりの麻生先輩が携帯に現れた。
麻生先輩とは委員会が一緒で何度か話した事があるけど、優しい印象だったと思う。それ以上でもそれ以下でもなくただ、そういう印象しか覚えてないのだけれど。
目立ちはしないものの影が薄いわけでもなくて、万人受けしそうな先輩の雰囲気は誰もが取っつきやすいスペックを持っていて。
多くはなかったけどクラスに何人か「かっこいい」とときめいていた子もいたと思う。
そんな彼とまさかこんな事になるとは。フユちゃんが知ったら最高に面白がるネタだと思わずにはいられない。
トーク画面を見れば写真に続いて『相手側にハナの連絡先教えたからあとは若い二人で事を進めてね』とウサギのあざといスタンプ付きで送られてきたメッセージに頭痛がした。

