先週くらいから母の”小話”が後を絶たない。
「…私、同い年の従姉妹がいるんです」
「あ?」
「小さい時から一緒で仲がいいんです。私の両親もその子を自分の子供みたいに思ってるくらいに」
「…」
「その子、妊娠したんです。二年くらい付き合ってる彼氏がいるんですけど」
「…あぁ、なるほどなぁ〜」
「で、来年結婚も決まってて」
「”あんたもしなさい”的な?」
よくある話だ。自分以外の誰かの子供が結婚をするってなったら”うちの子供も”となるのは。
先週から来る連絡はそれで持ちきり。「若く結婚して安心したいでしょ?」と言いつつ安心したいのは母の方で、挙げ句の果てにご近所さんの息子との縁談を持ってきた。
「見合いしろっていう電話が鳴り止まないと。はははっウケんな」
「笑い事じゃありません」
「お前、箱入り娘だもんな」
「一人っ子も悩みものですよ」
縁談は断った。一度会うだけでもって言われたけど、結果は変わらないのは目に見えている。
覆されるはずないって自信がありすぎるほど。
例えカイさん以上に惹かれる人がそんな近場にいたらとっくに結婚なんてしてる。
「母が勝手に突っ走ってるだけなので時間が経てば熱りは冷めます」
「お前、言ってねぇの?ーーーーーーーカイくんと付き合ってること」
「………」
言わないのは言いたくないからじゃない。
カイさんのためを思って言わないだけだ。

