アスカさんはカイさんに言われた通りに私の腕を引っ張ってその場を離れさせた。
苦しくてアヤセさんを抱き寄せるカイさんを見ることができなくて俯いたまま大人しくアスカさんに引っ張られるがままで、連れてこられたのはお風呂場だった。
「風邪引くから取り敢えず入ってこい。風呂に入れば少し落ち着くだろ」
「……」
「ヨシノくんも呼んだらすぐ来るよ。そしたらアヤセは帰るから」
「……」
「今更だけど止めに入るの遅れて悪かった。もっと早く俺が動いてればお前に手出させることもなかったのに、完全に俺の不注意だ」
「……」
「……」
「……」
「…ハナ」
「……」
脱衣場でただ静かに涙を流す私にアスカさんは悲しそうに私の名前を口にする。
本当は大丈夫ですって言いたかった。自分の不注意だって戒めるアスカさんにそんな事ないって、止めに入ってくれてありがとうって言わなきゃいけないのに、出て来るのはその言葉ではなく次々と流れ落ちる涙。
頭がグチャグチャでただ泣く事しか出来なくて、今もまだあそこでアヤセさんと2人でいる事を考えるとどうしようもない感情に押し潰れそうになる。
だってやっぱり思うのは、あの2人に私の入る隙なんてなかった。
2人には2人の世界があった。
私が絶対的に入れない雰囲気がそこにはあって、それを目の前で見せつけられたら私はただ黙って見てるしか選択がない。

