心の底からの安堵だった。
もう大丈夫だって思えた。スーパーヒーローみたいな登場で全て丸く収まるんだって確信ができた。
けど、カイさんは一度も私の事を見ようとせず静かにそっと諭した。
「…アスカ、悪かったもういい」
その言葉が魔法だったかのようにアヤセさんは牙を抜かれた獣みたいに静かになり、アスカさんは抑え込んでいた手を放した。
そして、地面に倒れたままのアヤセさんを起き上がらせ優しく包み込んだ。
子供をあやす親のようにアヤセさんの背中を何度も何度も摩って、次第にアヤセさんは肩を震わせた小さく嗚咽を漏らし始めた。
「…アスカ、ヨシノに連絡いれろ。あとハナを連れて行ってくれ」
私はこの会場から弾き飛ばされた。
やっぱり村人Aは簡単に画面からフェードアウトされるものらしい。
ねぇカイさん、その胸で泣きたいのは私も一緒だよ。
背中を摩っていつものように優しい声で「大丈夫だ」って言われるっていうのが私のシナリオだった。
カイさんじゃなきゃ嫌だよ。私にはカイさんしかいないのに。どうして私にはその人を弾き飛ばす力がないんだろう。
ねぇ見てよ。その人に馬乗りになられて打たれて爪で引っ掻かれた所為で私だってボロボロなんだよ。
「…カイくん1つだけ言わせて。こいつだって同じだよ。だって現にこいつは、あんたの女だろッ…!」
アヤセさんに触れないでよ。
「大事に出来ないならこいつの男だっていう資格なんてないよ」
私の存在忘れないでよ。

