ブンベツ【完】



きっと何か自分にできないか、何かしてあげれることはないか、カイさんなりに必死だったんだと思う。


多分……臨床心理士になりたかったのも彼女の為だったのかもしれない。


アヤセさんを支えたくて勉強をやってこなかったのにも関わらずその進路を選択するほど、彼女を、アヤセさんを愛していたんだ…。

けどアヤセさんが選んだのはヨシノさんだった。サポートをする覚悟をしたのにそれはヨシノさんに振られた。

きっと優しいカイさんのことだから身を引いたんだと思う。
自分が入れば2人の邪魔になってしまうかもしれない、という気遣いだ。


苦しくて胸が張り裂けそうになる。想像もできない想いの重さに心が押しつぶされそうで、ギュッとその本を思っ切り抱き締めた。

私に出会う前のカイさんは全部アヤセさんだけのものだった。身を引いたのもアヤセさんの為でカイさんにしか出来ない伝え方で、優しさ。あの厚い胸板の奥に傷ついた心が沢山あったはずで、それは今もある。



だってこの本が今も大事にしまってあるのが何よりの証拠だから。