ブンベツ【完】



その後目一杯"ご褒美"をもらっていつもの様に駅まで送ってくれて解散になった。また明日と喉から絞り出して改札へ向かう一歩の踏み出す力を噛み締めて電車に乗って帰った。

また明日、の言葉が救いであり安定剤であり明日へ続くための保証でもある。
今日も言えて良かったと私は電車に揺られながら毎回安心するのだ。



『…おかけになった電話番号は現在、』


このアナウンスを聞くのは今日で3回目。朝電車に乗る前にかけて2回目はお昼にかけた。ホームルームが終わった現在でも携帯から聞こえてくる無機質な音は同じまま。

朝からずっとカイさんと連絡がつかない。

こんなこと今までなかった。明日から始まるハッピーマンデーを含んだ三連休の2日間、お父さんとお母さんが家を空けることを朝知って久々にお泊まりが出来る嬉しさに電話をかけた。

着歴を見れば今日に限らず一覧にはカイさんの名前が連なってる。かけるのはほぼ私からで眠れない時や声が聞きたくて夜かけたりするのがちょくちょくあった。

何時だろうがカイさんはいつも電話に出てくれた。なのになんで今日は出ないんだろう。変な胸騒ぎがするのは天気が急に悪くなって空がどんよりしてる所為だからだ。彩度のなくなって今にも降り出しそうなのにやけに静かでゾッとする。

嵐の前の静けさほどゾッとするものはない。降り出す前に急いで学校を出て電車へ飛び乗った。

アスカさんに電話して聴こうかと思ったけどそもそも連絡先を知らない事を知って更に拍車がかかって不安だけが募って行く。