「そんなことないです」って意地になって食らいつく私の頭をクシャッと撫ででカイさんは少し笑った。それは自嘲的なものではなくてただ素直に溢れたものに見えた。
「だからですか?」
「何がだ?」
「私に勉強をさせる時間を作ってくれるのは?」
「いやそれは違う。あんたは頭がいいから俺がやれって言わなくても絶対最後にはやるんだよ。だから俺みたいになるなって意味で時間を作ってるわけじゃねぇ」
「ならどうして?」
「使命に近い感覚だな」
「使命?」
「あんた俺と付き合うようになって生活が変わっただろ?家にいる時間も減っただろうし帰る時間も全然違う」
「はい」
「今までと全然違う生活にあんたの両親は良い顔はしねぇだろうな、確実に。あんたのことだからないんだろうけど、もし仮に男にうつつを抜かして成績が下がったら尚更だ。だから学生の本業でもある勉強はやれるように配慮はするってだけだ」
「なんでそんなカッコいいことさらっと言うんですか」
無意識に私をときめかせる天才すぎますよ。ナチュラルってとこがまたポイントなのになんですかその大人の余裕。
「けど限界もあるからさっさと終わらせろ。帰ったらご褒美くれてやるよ」
そんなこと言われたらやらないわけにはいかないじゃないですか。本当に飴と鞭の使い分けがうまいんだよこの人は!!

