ブンベツ【完】



季節は夏の残暑の欠片もなくブレザーに袖を通すのも最近ではちらほら校内で見かけるようになった。

進路もぼちぼち決まり始めた人たちが出始め私の学校では就職する人はほとんどいなく大学進学者がほぼ割合を占めている。

私もその中の1人で行きたい大学も決まり数ヶ月後には試験がある。
勉強が嫌いな方ではなく頑張ればそれなりの結果がついてくるレベルだ。
先生曰くこのまま普通に勉強していれば試験は受かると言われた。けど裏を返せば力を一瞬でも抜けば落ちるという事。

放課後毎日勉強してるけど全く集中が続かない。
私の思考は夏休みが終わって2ヶ月も立つというのに未だにアヤセさんで埋め尽くされている。


ヨシノさんと離婚する事を知ったあの日からそのことに触れないのは暗黙の了解になった。

カイさんは特に変わりはない。前よりぼーっとする時間が増えたとか優しくなくなったってことは全くなくて、寧ろ以前より私を気にするようになった。

不自然なくらいに。


「図書館に行こう」


2週間前あたりからお店の最寄駅に迎えに来てくれるのが日課になった。

今まで帰りに送ってもらうことはあっても迎えに来てもらうことなんてなくて吃驚したけど特に追求はしなかった。きっと「深い意味はない」と返ってくるのは目に見えているから。


だから今日もいつもの様にカイさんは小さな改札前の所で待っていてくれて、近寄るなり私の手を取って「図書館に行こう」と言い出した。