取り憑かれたように不安と恐怖に襲われたのはあの海の日からなのは確かで、呪いの紙切れを貰って気持ちが摩り切れ始めた。
だけどそれよりも鮮明に残っているのが、アヤセさんがカイさんの元へ駆け寄って抱き付いたあの時。
勝てないと思った。
何がって具体的じゃないけど、ただの直感だった。
直感的にこの人に勝てないと思ってしまった。
私は確かにあの瞬間、敗北を感じた。
アヤセさんが本気でカイさんを望めば私なんか一瞬で入る隙がなくなるんだと、2人を見て思ったから、だから、だから私は、
「私を好きって言ってくれるカイさんを信じようってッ…!」
それだけがたった一つの望みで、
「勝てないんです!勝てないってあの時分かってしまったんです!!」
2人の世界がそこには確かにあったから、私が必要じゃない世界がそこにはあった。
あんなとこを見たら信じられるのは限られてしまった。
「お前カイくんのこと信じてないんだろ?あの人がどんだけお前を大事にしてるか分かってないのか?」
「分かってます!そんなことはとっくに分かってます!」
「ならそんな馬鹿なこと言ってんなよ!」
「それ以上にアヤセさんがカイさんの中にいるってことも同時に分かっちゃうんですよ!!だってーーーーーー好きだから!!」
好きだから一緒にいるから分かることだってある。

