ブンベツ【完】



世界が一瞬止まるって、こういうことなんだと思う。

言われた言葉を何度も何度もリピートして理解をしようとするけどそれはただ繰り返すことにしか過ぎなくて、思考は固まる。

『結婚』という意味が私の中の辞書からすっぽり抜けて "考える" ことを放棄したのかもしれない。

だから言葉が全然出てこない。
というか声すら出ない。
鯉の真似てるように口をパクパクしてバカみたいな反応しかできない私をカイさんは笑いながらアクセルを踏んだ。

信号は青。
だけど私の思考は止まったまま。


「なんか今不意に思っただけだから間に受けるな」

「え、あ、いや、あの…」


じゃなくて、そうじゃなくて、私は、私が言いたいのは、


「私も家族になりたい…です」


そんなの夢みたいだ。
夢というより妄想のような感覚に近い。
なんて酷い妄想だろう。
欲深いにも程があるのに、これを現実だと受け入れることすら怖い。


「間に受けるななんて無理です…それはズルいです…」


今更前言撤回なんてさせません。


「あんたとならぜってぇ上手くいくと思うんだけど」

「……ーーーーーーー」



ーーーダレトクラベテ?