ブンベツ【完】



じょ、上手にって言われても…。
そもそも「誘う」ってことがイマイチ分からないのにどう攻略すればいいのかって時点の問題だ。

あぁもう恥ずかしい。
恥ずかしくて顔が凄い火照ってるしカイさんが凄いカッコ良すぎるし、もう本当に色々恥ずかしい。
だから出来るだけ目を合わせないようにカイさんの首に腕を回して誤魔化すようにキスをする。

いつもするようなやつじゃなくて子供騙しのようなキス。
カイさんがしてくれるやつは息が苦しくて続かないしどうやっていいかも分からない。

どうやったらカイさんに近づけるんだろう?
どんな風にしたら満足してもらえるか、なんていつも考えるけど応えるのに精一杯で。


「カイ、さん…」

「ん?」

「…好きです。大好きです…」


こんな言葉しか出てこない。
これしか思いつかなくて、他の選択肢すらなくて、


「ハナ」

「はい」

「それ、すっげぇ殺し文句」

「…はい」


背中に回るカイさんの腕が熱くて溶けてしまいそう。
それで一つになることが出来たら本望なんだと思う。

カイさんの一部になりたい。
だからずっと一緒にいたくて堪らない。
私がカイさんの一部であるといつも思いながら優しい腕に身を任せて、私の一部がカイさんであるように願ってる。


「…悪い、もう余裕ない」


そう言ったカイさんの顔はえらく妖艶だった。