ニッコリと窓越しに笑う彼女を本当にお人形さんの様だと思った。
こんな笑顔を向けられたら誰だって好きになっちゃうって直ぐ分かる。
パッチリとした大きな二重の瞳に形のいい薄ピンクの唇や、雪のように白い肌。
美しすぎる美貌に女の私ですらうっとりしてしまう。
カイさんはこんな人が好きだったんだって思うのと同時に、それがすごくしっくり来ることに悲しくなる。
二人をいるとこを想像したらお似合いのカップルで、周りの人が思わず納得してしまうんだろう。
想像するだけでも息苦しくて、早くカイさんが戻ってきてほしいと願って意を決してドアノブに触れる。
ドアノブを引く手が微かに震えるのを感じながら鉛の様に重いドアを開けて「こんにちわ」と挨拶をした。
外に出ればギラギラを光る太陽に溶けてしまいそうなのに、何故か冷や汗の様なものが背中を通る。
ヤバい…私、アヤセさんが凄く苦手かもしれない…。
だから早く要件を済ませたくて必死に頭を巡らせた。
この車がカイさんが乗ってるものだと知ってたからこの車を覗いたのかもしれない。
だとしたらアヤセさんはカイさんに会いに来たってことになる。
「あ、あの、カイさん、ここにはいないんです」
アヤセさんは声が出せない。
私は手話はできないし、どう話を成立させるか心配になる私を目の前に、ポケットから小さなノートを取り出して慣れた手つきでそこに何かを書き始めた。
手早く書き連ねたそれを私に晒すそれには『もう帰るの?』と綺麗な字で書かれてあった。

