「……」
「なぁ、本気で言ってるんだけど」
「…私だって本気です」
そう言うとカイさんは静かに「わかった」と受け止めると、直様起き上がってシートに寝転ぶ私の腕を勢い良く掴んで起き上がらせた。
いつもより少し強引な力で手を引いて歩くカイさんとテントを出た。
勿論向かうのは朝停めた黒塗りの車で、手際良くセンサーで鍵を開けると押し込めるように助手席に私を乗らせると。
逃げたりなんかしないのに、焦った様子で「すぐ戻る」とドアを閉めて砂浜へ戻って行った。
きっとヨシノさんか誰かに帰ると伝えに行ったんだろう。
テントの荷物番もあるだろうし勝手にいなくなったらまずい。
車内は空気がモアっとしていて静かだ。
強引に引き寄せたカイさんの力を思い出して早く戻ってきてほしいと、私も余裕がないことに気づく。
昨日昼間カイさんとシテるシーンが脳を過ってドッと羞恥に苛まれるけど、今は早くあの腕に抱かれたいって言う気持ちの方が大きい。
繋がる瞬間に神秘に近いものを感じて、最後果てる瞬間のカイさんの顔を見ると幸福感を味わう。
カイさんもそう思ってくれてたら嬉しい、なんて思っていると。
突然左の窓ガラスから「トントン」という音がして、視線を向けるとそこにいたのは、ーーーーーーーー綺麗に笑うアヤセさんがいた。

