ブンベツ【完】



全然そんな雰囲気を感じなかった私は開いた口が塞がらなくて、人はやっぱり見かけによらないと改めて思った。

どうやら話を聞けば高校時代から付き合ってた彼女らしく、去年の秋頃に結婚をしたらしい。
そんな素敵なサジさんの奥さんだからきっと素敵に違いないんだろうと思ってると「今度連れてくる」と約束をしてくれた。


「ごめんな?今からその奥さん迎えに行かなきゃなんねぇだ」

「でも車が」

「いや、アイツの仕事場がここから電車で3つだから大丈夫だ」


「今日はありがとうな」と私が言う台詞なのに、素敵な笑顔を向けて優しく頭を撫でてくれたサジさんは颯爽と帰っていた。
向かう背中がなんだか嬉しそうで、早く奥さんに会いたくて仕方ないって感じが背中からしてバレバレだった。


「ずっとここにいてもつまんねぇだろ?アイスでも買いに行くか?」と私がテントから出ないのを気にしてるのか、カイさんは気を使ってくれる。

海に来て泳がないのもどうかって思うけど水着を持ってない上に、水着姿になる自信もない。
だからと言って退屈を感じてる訳でもなく、荷物が置かれるレジャーシートの上にカイさんと座ってぼんやりしてるの悪くない。

荷物に囲まれながら足は砂浜に投げ出してテントに籠るのは私とカイさんの二人っきり。
特にこれといって話す訳でもなく、自然に時間を流れるのを波の音と人のはしゃぐ声を聞きながら待ってる。