やめて…。
触らないで…。
カイさんに、触らないで…。
まるでその場に自分達しかいない様な、そんな二人だけの雰囲気がそこにはあって、私が入り込む隙なんてない。
目の前で起こる状況から目を離したくて堪らないのに、体は言う事を聞いてくれなくて。
目を逸らす事もその場から逃げる事も出来ない。
地に根が張って足に絡みついてるみたいに、錯覚すら起こしそうで。
ただ、見てる事しかできない私は酷く滑稽に思えた。
だけどそんな私を助けてくれたのは、隣にいるアスカさんだった。
「ちょっとカイくん!ハナが呼んでる!」
その声に振り向くカイさんが私を捉えた。
私の今の顔を見てカイさんは何て思ったのかな。
呆れてる?こんな事で不安になって面倒くさい?
カイさんが私を大切にしてくれてるってちゃんと分かってる。
私を傷つけたりしないって分かってる。
けど、
それでも、
「ハナ?」
カイさんの事が大好きだからこんなに不安なの。
「ハナ?」
そういつもみたいに優しく名前を呼んでくれる。
安定剤かの様なその声に息苦しさや不安が徐々に減っていって、右手をそっと握って「大丈夫だ」って伝えてくれる。
大丈夫。
「俺はあんたから離れたりしねぇよ」
カイさんの彼女は私だもの。
カイさんがそう言ってくれる限り怖い事なんてない。

