彼女はこっちに近づいてくる。
小さな体で砂浜の上を覚束ない足を動かして、私たちがいる方へ。
「俺はこいつにアヤセの事を隠してコソコソやってる方がずっと酷だよ思うよ」
「そうだとしてもハナちゃんがどんな思いするか分かってんだろ」
勝てないと思った。
「それでもこいつには知る権利がある」
「それは俺たちが決める事じゃねぇ。カイが決める事だ」
彼女は無邪気に笑ってこっちに走り寄ってきて、嬉しそうな表情でそのままその人の胸に飛び込んだ。
私が大好きなカイさんの胸へ。
勝てないと思った。
一生この人には勝てないと。
カイさんが私に背を向けてるからどんな表情をしてるのか分からない。
けどそこには、私の知らないカイさんがそこにいた。

