「カイくんがアヤセに出会った頃にはもう耳が聞こえなくなってたんだと。高校の時バイトしてた店で店長に水槽に頭沈められたのが原因らしい」
「沈められたって…」
「そいつ経営がうまくいかなくてピリピリしてたらしくて、気の強かったアヤセが”八つ当たりすんな”って言ったらブチ切れたんだよ」
「酷い…」
「そっから高校中退して幼馴染みだったヨシノくんと結婚して今に至るって感じだ」
ヨシノさんと結婚してるアヤセさん。
そのアヤセさんの事を、カイさんはずっと好きだったんだろうか…。
結婚しても忘れられないままなんだろうか…。
「だけど耳が聞こえなくなって直ぐ結婚したわけじゃねぇ。その時の詳しい事はわからねぇけど、カイくんとアヤセはうまくいってたらしくて周りは全員二人は付き合うんだと思ってた」
想像するだけでわかる。
優しいカイさんはきっと、アヤセさんの支えになりたかったんだと思う。
カイさんは本当に優しいから。
きっとアヤセさんの傍にずっと居たかったんだろう。
だけど。
「アヤセが選んだのはカイくんじゃなくて、幼馴染みだったヨシノくんだった」
「……」
「何でそうなったのかは俺にはわかんね。カイくんは本気だったって周りは口を揃えて言ってたんだよ」
「……」
ずっと、聞きたかった事なのに…、聞きたくなかった…。

