ブンベツ【完】



走った所為で汗が出てくるし、サンダルに砂は入るしで大変だった。
そんな行きたいわけじゃなかったトイレを一応ある場所だけ確認の為探す事にした。

トイレどこですか、なんてあそこにいる誰に聞くのも恥ずかしいし、はたまた案内するよなんて言われたら申し訳がない。
取り敢えずトイレの場所の矢印の標識を目安に足を進める。


夏だからなのか平日でも人が多いらしいこの海は思ってたより人がいる。

まだ午前中だというのに男の人も女の人も水着ではしゃいでる人たちが多い。
そんな中ノースリーブのシャツに短パンという色気も何もない私は、やっぱり水着の方がいいんじゃないかなんて頭の隅に浮かぶ。

前から来るスタイルのいい綺麗な女の人を見て、いてもたってもいられず目を離そうとしたけれど。


「21に見えねぇんだけど、彼氏は?」


その人と並行に歩く男の人に目が止まった。
一瞬見間違えかと思ったけど、どんどん距離が縮まるにつれてそれは確信に変わっていく。

楽しそうなノースリーブにビーサン姿のその人に見覚えがある私は思わず「あ」と口から声が出た。
声に出した瞬間失敗したと思った。

私が発した声にさっきまで横にいる女の人に向けられてた目がこっちに向かったから。
目がバッチリあったその瞬間、もう後戻りが出来ない事を察した。


「あ、お前なんでこんなとこいんだよ?」