触れないでほしい。
私以外の人に優しくしないでほしい。
「ハナ」
「………」
「ずっと前の話だ。今はそんな事してねぇ」
「………」
分かってる。
カイさんは私を大切にしてくれてるって分かってる。
「ムカつくんならそう言え。うぜぇって殴れよ」
「……そんなこと…」
出来るわけない…。
膝に乗る手に力が入って服を皺くちゃに握りしめた。
「俺はどうしてもあんたの機嫌を取りたくて必死なんだよ」
いつもより優しい口調のカイさん。
「ハナ」って優しく呼ばれて、それに抗えない私はゆっくりと顔をあげてカイさんを見た。
「あんたに嫌われんじゃねぇかって焦ってっからどうするか今考えてる」
「どうして？」
「あんたと別れたくねぇからだ」
強い眼差しが私を射抜いたと同時に胸の奥がじんわり温かい何かが広がるのを感じた。
満たされてたって多分こういうことなんだと思う。
そんな一言がたった一瞬で私の心をときめかせてしまう。
私だって別れたくない。
ずっとずっと一緒にいたいもの。
だからバカらしく思えてきて思わず笑ってしまった私は「仲直りしましょう」って子供みたいなことを言った。
「このままプンプン怒ってカイさんに嫌いって言っちゃったらカイさん悲しいですもんね」
だからちょっと意地悪のつもりで言った私の言葉にカイさんは、
「あぁ、そうだな。あんたにそんな事言われたら死んでもいいかもな」
