思わぬおじさんの言葉に自分でも分かるくらい反応が表れた。
メニュー表を持っていた指がビクッと大きく震えた。
さっきまで店内のクーラーが心地よかったのに背中がヒヤッとするほど寒さが襲ってくる。
女遊び……たったそのおじさんの一言で空気が張り詰めた。
おじさんは余計な事を言って妙な空気に気づいたのか、居た堪れなくなったというように注文を取るとそそくさお店の奥へと引っ込んだ。
「………」
「………」
おじさんが落としていったそれはあまりにもとんでもないものだった。
カイさんの顔が見れない。
だって今凄い酷い顔してるって自分でも分かってるから。
ずっと前アスカさんにそんな様な事を言われた覚えがある。
『散々ヤるだけヤッて、後はポイ』、それがカイさんの常套手段だって。
これがおじさんの言う女遊びだって事なのかもしれない。
そうだとしても私の知らないカイさんがいるって事は分かってる。
それはどうしようもない事だって分かってるのに、やるせない気分が私を襲う。
私より多く生きててこんなにかっこいいカイさんがモテないはずがない。
私よりきっと大人で綺麗に違いなかっただろう。
カイさんが自分以外の女の人に触れたって考えるだけで泣きたくなってしまう。

