暑い中10分くらい歩いて着いた頃にはもう汗が溢れ出るくらいで、一目散に中に入った。
住宅地の外れの道路の脇にあったそのお店はどこにでもある普通の古風はお蕎麦屋さんだった。
「らっしゃい」
カイさんの言う通り、鬼とは言わないけど作務衣姿の強面な白髪交じりの男性が一人奥から出てきた。
どうやら店内には私たちしかいないみたい。
「おめぇが自ら出向くなんざ明日は大雪か。そこの嬢さんはもしかしておめぇの連れか?」
何故か畳の方へ通され腰を下ろした私たちにお水を持ってきたその人が仕切り無しにカイさんに話しかける。
「あぁ」と短く返事をするカイさんはいつもの事なのか、メニューをじっと見つめておじさんの話をあしらう感じだ。
私はいつその態度に怒り出すんじゃないかとハラハラしながらメニューを探る。
「店は最近どうなんだぁ?まぁおめぇがおっかなくて誰も近かねぇか」
どれが一番美味しいんだろう。
いつも食べてるざる蕎麦よりも今日は違うのも食べてみたい。
「それよりおめぇがこんな真昼間から女連れてんの珍しんじゃねぇか?」
天ぷら蕎麦もいいし、おろしもなかなかいいし、梅シソも捨てがたい。
んーここはやっぱり、
「女遊びはもうやめたのか?」

