「あの、もしカイさんがいいならサジさんのお店に私たちが行きませんか?」


実は言うとお店に行ってみたいって思っていた。
いつも届けてもらうからサジさんのお蕎麦屋さん勤務が全然味わえない。
その上美味しいお蕎麦を打つお店の雰囲気とか気になる部分も多々ある。

だから躊躇いがちに口にしてみた。


だけど……我儘を言いすぎたかもしれない。
よく考えたらこんな太陽がギラギラする炎天下に出たいなんて思わないだろう。

インドア派のカイさんからするとちょっと間違っていたのかもしれないって口にして気づいた。


「あ、やっぱり大丈夫です。出前にしましょう!」


お蕎麦を食べれることには変わりはないんだから出前でも全然いい。
私はカイさんといられればどこだっていい。


「カイさん何食べます?」

「別に外に出たくねぇって思ってない。アンタが嫌なんじゃねぇかって思っただけだ」

「え?」

「アンタが好きな方選べばいい。店に行きてぇんだろ?」


面倒くさがるわけでも仕方ないって感じでもなく、優しく諭すように我儘を聞いてくれるカイさんに素直に頷くしか術ははなかった。

大人のカイさんにはすべてお見通し。
今までも私がすることを優しく聞いてくれたし、嫌がる素振りなんてまるでなくて。
いつも大人の余裕を感じる。