仕方のないことだった。

私は全部知ってた。

カイさんが夜中連絡を受けて1時間くらい家に帰ってこないことも。
それはアヤセさんからの連絡からで、カイさんがそれを断れないって事も。

私には踏み入れない2人の世界があるって事も。


「カイはアヤセよりハナちゃんに執着しまくってんだよ」


それは罪悪感があるからで、私がどうとかじゃない。


「アイツはハナちゃんじゃなきゃ駄目で、ハナちゃんじゃなきゃこんなことになってねぇしアヤセの時よりアイツは人間らしいよ」


私はアヤセさんに敵わない。
私はアヤセよりカイさんの中の“絶対忘れられない人”にはなれない。


「アイツは最初から迷ってたんじゃねぇ。最初からハナちゃんはアヤセより勝(まさ)ってた」

「最初からカイさんは私のものですらなかったんです」

「ハナちゃんのものなんだよ」

「…………」

「そんで、ハナちゃんはカイのもの。それは今も昔も変わらねぇ暗黙の了解だろ?」

「………」

「カイにチャンスをやって欲しいんだ。これが一生で一度のラストチャンス」

「………」

「もしそれでも無理だっていうならもう二度と会わなくていい。会わせねぇって約束する」


ーーーーだけど、少しでもまだ可能性があんなら、カイのそばにいてやってくれよ。