「ハナ」
あまりの優しい声に踏み出した足が止まった。
不意打ちすぎて思考回路も固まって動けないでいた。
知らない人みたいだった。
今まで聞いたことのない声で私の判断能力を一瞬で奪って行った。
心臓がポンプで押される様に強くドクンって言うのが聞こえて、それは着々と速くなってってる。
「結論づけて勝手に帰んな」
「わ、私が、それでいいって言ってるんだからいいじゃないですか」
動揺してることを悟られない様に振り向いてジッと見た。
声が裏返りそうだった。
「もしそれでもお給料をくださる様でしたらアルバイトは今月一杯で、」
「駄目だ。それは俺が許さねぇぞ」
「な、」
…なにを勝手なことを……。

