「どうせ、ハナちゃんを必死に繋ぎ止めようとしたけどやり方が分かんなくてヤケ酒に走った質だろ」
「………」
「アイツは大事なもんは目の届くとこに置いときたいタイプだ、昔から」
「………」
ヨシノさんは勘違いをしてる。
まるでカイさんが傍に置きたいのは私だと言うような物言いをしてるけど、それは違う。
確かにあの時、あの夏の一瞬の3ヶ月間、カイさんに大事にされてたって痛いほど分かってる。
苦しいほど分かってた。
だけどそれが苦しくて、苦しくて。
私を壊れ物の様に大事に扱う度、カイさんの中の気持ちがどんどん死んでいく様で苦しかった。
「違いますよヨシノさん」
「違う？」
「カイさんといたら幸せになれないんじゃなくて、私といたらカイさんは幸せになれないんです」
私といたらカイさんは無意識にアヤセさんの想いを殺してしまうから。
「例え大事な人が出来たとしても、過去に凄い愛した人が他人になる訳じゃないでしょう？」
「アヤセとはもう終わってる」
「関係が終わっても気持ちまで消えるわけではありません。ごめんなさい、アヤセさんの旦那さんであるヨシノさんにこんな事を言うのは可笑しいですね」
「違えよ、カイが大事なのは昔も今も、」
「大事にされてた事は本当に分かってるんです。幸せだったんです本当に。だけど、“私はアヤセさんに敵わなかった”、ただそれだけのことだったんです」
