「ちゃんと距離を保って接してますよ?」
だから思ったことを言っただけなのに、ヨシノさんはフッと笑うと私の頭を優しく撫でる。
バカにした感じではなくて、何ていうか子供を見守るような優しい感じがしてどう反応したらいいのか戸惑うしかなかった。
「オスはいつでも目ぇギラつかせてんだよ」
「皆んなが皆んなヨシノさんみたいな子たちじゃありませんよ?」
「おお?言うようになったなァ?」
私の皮肉にゲラゲラ楽しそうに笑いながらゴシゴシ粗く頭を掻き撫でた。
見事にボサボサになった髪を手で梳かす私は、じゃれ合うこの時間が楽しい反面寂しくも思う。
誰が嫌だとか誰が悪いとかそういうことじゃなくて、私はもうここにはいられないって分かってるから寂しくなる。
4年ぶりに会ったからといって前みたいに一緒に居られるわけじゃない。
一緒にいちゃいけない。
皆んなが思ってるようなあの時の私は、もういない。
「カイが嫌い?」
「え?」
「“こんな男といても幸せになんてなれるはずない”って思ってる?」
何とも言えない表情で私を見て視線を逸らすと、寒い中私達に背を向けて窓際で寝てるカイさんを見た。
一瞬話を聞かれてるんじゃないかって思ったけど規則正しい寝起きが微かに聞こえるから寝てる事は間違いないみたいで安堵する。
ヨシノさん曰く、昨日あの後朝方までお酒を飲んでたらしく私がリビングに行った時はもう限界だったみたい。

