ブンベツ【完】



そのぐらいでフェアなはずなんだ。

これ以上甘えるわけにはいかない。
私にだって人並みの常識ぐらいある。


「税金で生きてるくせに寝てる政治家に聞かせてやりたいぐらいだな」


フッと鼻で笑ったカイさんは急に立ち上がって私の横をすり抜けると、そのまま台所に向かって冷蔵庫を開けた。

全く話が終わってないのに、何をどうしたのか冷蔵庫から出て来たのはビールで、その場で急に飲み出した。

ギョッとした。
このタイミングで?って心底呆気に取られたぐらい。

流し場に体重をかけて寄りかかりながらビールを流し込むカイさんは何故か笑っていて、私に大人の余裕を見せてくる。


「給料泥棒になりたくねぇってか。最近のガキは意外としっかりしてんだな」

「…酔ってます?」

「誰が酔うかよ」


缶ビール片手に説得力がない。
喉仏を鳴らしながらゴクゴクと流し込む姿にこれ以上埒が明かなそう。


「……兎に角お金は入りません。ヨシノさんにもそう伝えてください」


置いてあった鞄を肩にかけてそそくさ帰ろうとしたとき。