『ハナ』
4年前と変わらない声で呼ぶそれに思わず足が止まる。
駄目だ、聞いちゃいけない立ち止まるな振り切れ。
ーーーーーー逃げろ。
「…ッ」
「おいバカッ」
総てを振り切るように走り出した私にアスカさんが声を声をあげた気がした。
鞄とコートを胸元で握りしめ、惨めすぎる自分が情けなくて下唇を噛むしかなかった。
フロアに降りて胸を打つような爆音の下で無造作にに踊る人たちに紛れて逃げるしかない。
ローヒールであっても俊敏に動ける筈もなくて必死に人を掻き分けてあそこから離れるしか無かった。
「ッちょっとなんなの!?」
「誰よ押したの!!」
「邪魔すんじゃねーよ!」
私が無理やり通る所為で色んな罵倒が飛ぶけれどここで一人一人謝ってる暇もなく、入ってきた大きな扉に続く階段を目指して必死に踠いた。
だけどあともう少し、と思ったその時、
「ハナ!!!!!」
爆音に紛れてあの人の声が聞こえた。
それはどんどんこっちに近づいてきてるようで、そのあまりの怒声に周囲の人たちが驚いて道を開けられていくのが分かる。
「誰かその女捕まえろ!!!」
なんだと驚きを隠せない人たちがその声に反応して皆んな一斉にして私を見た。
冗談じゃない、この人たちが全員カイさんの見方をしたら逃げれなくなってしまう。

