ブンベツ【完】



「災難だなー、センセー」なんて黒服の人はまったくそんな事思ってないだろうって分かるくらい笑った。
全然笑い事じゃない。


「ちげぇよ、こいつの災難はもっと前から始まってんだ。あの男に捕まった時からな」


そう言い残すとアスカさんは黒服の人を通り抜けて地下へと続く階段を降りた。
すれ違い様さりげなく頭を下げると、その人はにっこりと笑った。

中に入ると黒で統一されたデザインで、それは地下に行くエレベーターも同じだった。
クラブというものに来た事がないから、こういうものなんだと勝手に納得して終わった。

エレーベーターを降りると目の間に合ったのは花堅く閉じてある重そうな大きな扉。
そこから微かな振動が聞こえるから、この先がそうらしい。


「中に入るとうっせー上に人がウジャウジャいるから離れんなよ」


もし離れたらこの人は絶対探してくれないって自信があるから絶対アスカさんの腕を放さないと覚悟を決める。
じゃなきゃ帰れなくなる。




ーーーーーそこは別世界だった。

堅く閉じた扉を抜けると襲ってきたのは耳を塞ぎたくなる様な爆音と人の熱気。
天井が吹き抜けになっててそこから大きなミラーボールが回転して店内に光を当てる。

下へと続く階段を降りるのも一苦労で、人が至る所で集団を作ってる。
掻き分けるように前に進んで行くアスカさんに縋りながら一生懸命付いてくしかない。