ブンベツ【完】



人の流れに逆らって「さみぃ風邪引く」なんて文句を零す始末で、呆れて何も言えなくなった。
もうここまで来てしまったら腹を括るしかない。

駅を抜けて寒空のした相合傘をしながら繁華街を進み狭い路地裏を抜けると辿り着いたそこは、『クラブ』というものらしく。
入り口にこんな寒空の下黒服の男性が一人立っていた。
ガタイがよくて威圧感を醸し出すその男性にアスカさんは平気で話しかける。


「よお、さみぃ中大変だな用心棒も」

「おーアスカか。いっその事大雪でも降って閉じてくれた方がずっといいわ」

「大雪なら尚更さみぃとかで客は増えるだろ。文句言ってっとオーナーにシバかれっぞ」

「だな。ぶっ飛ばされたくねぇからな。…てかそっちはアスカの女か?」


アスカさんの斜め後ろにいる私にチラッと視線を寄越したたその人は「珍しい。お前にはもったいねぇな」と私を頭から爪先までじっくり見た。
スーツにパンプス、マフラーというなんともこの場に似つかわしくないこの格好が恥ずかしい。
中になんて入ったら絶対浮くに決まってるのに、この人はまったく…。


「学校のセンセーやってんだ。今から下の奴らに見せびらかすんだよ」


じょ、冗談でしょ!?
私こんな事するために来た訳じゃないし、わざわざそんな事で連れてこられたっていうの!?