ブンベツ【完】



お昼をご馳走してもらって、あとは数時間カウンターに座ってるだけ。

妄想で暇を潰すことが大半で時々箒で掃くことはあっても労働とは言えない。

それで給料を貰おうなんて図々しいにも程がある。
お金欲しさにここに来てるわけじゃないけど、そういう仮定でいるわけだからそれなりの仕事をしないといけないのに。

これはどうにかしないといけない。


「カイさん」


お店の戸締りを終えて居間にいるカイさんに声をかけた。

窓を開けて煙草を吹かしているカイさんは私を見上げて来た。


「あの、…お話があって」

「……」

「私のアルバイトのことでちょっと…」

「何かあったのかよ?」

「いえ、そうではなくて。…生々しい話で申し訳ないですけどお給料のことでちょっと…」


思わず声が小さくなってしまった。
生々しいお金の話である上に私の給料泥棒の後ろめたさに、どう上手く説明できるだろうか。